コペルニクスの地動説と天動説の話は、常識が覆される例として有名です。実は私たちの身近にも、「当たり前」「常識」とされていたことが時代とともに大きく変わった例はたくさんあります。
たとえば、私の中学時代──もう半世紀も前になりますが(笑)──部活動では、先輩からうさぎ跳びを強要され、ランニング中には「バテるから水を飲むな」とまで言われていました。
しかし今では、うさぎ跳びは膝を壊すリスクが高く、ランニング中の適切な水分補給はむしろ必須とされています。
ほかにも、
・水道水は飲んではいけない → 現在は世界トップレベルの安全性
・焦げは発がん性がある → 今では過剰摂取でなければ問題ないとの見解も
・遺伝子は変えられない → エピジェネティクスの研究で、環境で発現が変化することが明らかに
と、私たちが信じていた“常識”が次々と見直されています。
歯科界における「定説の転換」
先日、歯科医師会の学術講演会に参加した際、私の中でも大きな転換がありました。
「楔状欠損(WSD)は、噛み合わせによって生じる」──そう教えられ、信じてきた私にとって衝撃だったのは、「実は歯磨きの仕方が主な原因である」という報告でした。
つまり、歯磨きによる過剰な圧や硬い毛の使用、頻回な研磨剤の使用が、歯頸部に損傷を与えていたのです。
「食後すぐ磨く」は正しいのか?
この話に関連して、もうひとつのテーマが浮かびます。「歯は食べたらすぐ磨くべきか、少し時間をおいてからが良いのか?」
私の記憶では、テレビ番組『ニュースステーション』で古舘伊知郎さんが「食べたらすぐ磨くな!」と力説していたのが印象的でした。実際、このテーマは学会でも二分するほどの議論になったそうです。
しかし、現在では次のような科学的な見解が広まりつつあります。
酸性の食品や飲料(酢の物、ワイン、ジュースなど)を摂取すると、歯の表面は一時的に軟化します。
その状態で歯を磨くと、エナメル質が削れやすくなり、楔状欠損のリスクが高まるため、唾液による再石灰化・中和を待つ必要がある。
つまり、「食べたらすぐに磨かない方がよい」という意見には一理あります。ただし、これは条件付きの話です。
結論:歯磨きのタイミングには「状況判断」が必要
結論としては、状況に応じて判断することが重要です。
・通常の食事(中性〜弱酸性)後は、早めに歯を磨くべき。
・酸性度の高いものを摂取した場合は、30分ほど時間をおいてから磨くのが望ましい。
「常識」は、常に更新されるもの。
歯科界においても、知識のアップデートを怠らず、柔軟な姿勢で学び続けたいものです。



